弁護士として、病院の立て直しのために再生計画を立てるときに、看護師を確保することが最大の課題となっています。ベッド数に応じて要求される看護師の数が不足すると、病院の再生どころか、違法とされ医療保険の適用ができなくなり、制裁として受領済の診療報酬の全額返還を要求されます。
看護師不足は病院経営にとって深刻な問題となっています。何と看護師は約２００万人いますが、実に約３割の６０万人が育児などで休業しております。三交代制の夜勤勤務に加え、日本の女性の就業が拡大しない課題と重なっています。まさに日本の社会の縮図であり、大きな社会問題です。せっかくの資格が生かされないことは社会にとって大きな損失といえます。そこで、日本看護協会も復帰のための研修などに大いに努力はしております。今年６月に再任された坂本会長は看護師、助産師の資格で大病院の部長まで勤め上げ、その間に、経済学の修士と博士の課程を修了した勉強家です。幅広い学識を持って日本看護協会を除々に改革しておられます。
私は「ナースステーション一人開業」の提言をし、多くの方々と共に署名活動も始めています。日本看護協会の見藤隆子元会長は医師会に対し公の場で堂々と一人開業を認めるべきだとの提言をしました。坂本会長には是非これを引き継いで頂きたいのです。
また歴史的には、看護師が広尾病院事件など、多くの事件で医師の医療過誤に巻き込まれて、刑事事件で起訴され有罪となってきました。その結果看護協会は、一方では看護師の権限をなるべく狭くして医師の補助に徹するべきとの従来の考えがあり、他方では看護師の業務を拡大し、医師不足の中で、医療を補完すべきで、また専門分野の看護師資格を認め、より権限を拡大するべきとの考え方もあります。私は後者の道を進めるべきと考えます。看護協会には６７万人が登録されていますが、日本最大の職業集団であり、誠に大きな力を持っています。男性の看護師も増えつつあり、社会的役割はより重要となっており、今後医師会と対等に協議され、医療の改革のために是非がんばって頂きたいとエールを送ります。