2019年12月 日大アメフット事件-不起訴とはどういうこと?-
スポーツではケガはつきものです。特に激しくぶつかるスポーツでは、相手とのやり取り、衝突でケガをします。そのケガを少なくするために、ボクシングからサッカーまで、ルールを厳しくしてきました。ルールに反する乱暴な行為は反則とします。しかし、判定はむずかしく、微妙なものも多いといえます。日大のアメフット選手が相手の後ろから背中か腰を突いた行為は、私は当初イエローカードくらいかと思いました。ところが、アメフットにくわしい方々は、レッドカードを出す悪質で危険な行為だと言います。そして、第三者委員会も、故意による危険行為と判定し、学生が単独でしたのではなく、内田監督らも関与しており、監督やコーチにも責任ありとしました。
第三者委員会は、過去には、独立性や中立性に欠け、責任なしとの結論、あいまいな報告も多く、信頼性に疑問がありました。しかし、最近では、調査の上、責任ありとする報告も多く、この場合には信頼性が高まっているといえます。この報告書を証拠として、解雇や減給処分をしたり、被害者が損害賠償請求することも可能です。しかし、刑事の懲役刑にできるかというと、直接の証拠とはできません。これを参考に、被疑者全員から供述調書をとらなくてはなりません。自白をとらない限り、起訴はむずかしくなります。刑事では、疑わしきは罰せず、推定無罪といわれ、約9割の黒の心証を必要とし、充分な証拠を示す高い証明度が求められています。もちろん、罰金刑という軽い処分にすますこともありえますが、扱い方は同じです。そして、刑事では、有罪推定だが今回は起訴しない、起訴猶予とする、という処分があるのです。
そこで、今回、不起訴との結論はおかしくないのです。第三者委員会の報告書は、内田監督らを解任することや被害者による損害賠償請求などをめぐる訴訟では、充分に価値のある証拠として活用されるのです。
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