社会への提言
2019年10月 朝日新聞編集長殿―東電無罪判決の扱いについて-
東京電力の旧経営陣3名は、業務過失致死罪について、無罪判決を受けました。被災者の皆様は怒りや失望を表明し、マスコミもほとんどは批判的です。なぜなら、国が2002年に、マグニチュード8.2級の津波を伴う地震予測「長期評価」を公表していました。東電子会社は、2008年、最大15・7メートルの津波がくると予測し、3名もこれを知り、安全対策を講じるべきでした。しかし、判決は国の長期評価は信頼性に疑いがあり、3名が10メートルを上回る津波を予見することは困難であったとしました。国の報告をこのように否定するのは極めて異例で、多くの人が納得いかないのは当然です。弁護士の私ですら、日本の司法は本当におかしいと言わざるを得ません。朝日新聞の社説は「釈然としない無罪判決」としましたが当然といえます。しかし、その一面の「視点」では、「無罪でも消えない責任」と謳っています。ただし、その責任は何かがはっきり書かれていません。私は、既に20年前に博士論文「取締役分割責任論」を公表しました。これによれば、結論は明解です。多くの関与した取締役の数百名には、民事裁判によるか、または自主的に、退職金を返上させ、1年~4年分の給与(報酬)を返還させ、責任をとらせるべきです。そして、極一部の者のみの責任を問う刑事裁判に依存することは原則としてやめるべきですが、すぐにやめられないのであれば、上記3名について、罰金刑を科すことにより、責任を明らかにすることがよいでしょう。新聞の司法へ与える影響力は大きいので是非責任を明確にしてください。
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