
社会への提言
2017年9月 NHKさん、いつもありがとう ―映像の時代に生きてー
私は昭和20年5月に、疎開先のコンニャクとネギで有名な群馬県下仁田村で生まれました。翌年には、東京へ戻りました。その東京の光景はあまりにも悲惨な状況でした。焼け野原、戦災孤児、傷痍軍人、飢えと病気に苦しむ人々。実に鮮明に1歳児だった私の脳裏に焼き付いているのです。私にとっては、忘れられない誕生日からの思い出、忘れてはいけない成長の記憶です。実はいつも、毎年8月、NHKが終戦特集として次々に放映してくれているからです。本当に大したものだと感心しています。今年は、ビッグデータに基づく新しい科学的実証方法を用いて、黒い雨による原爆被害を明らかにしてくれました。また、ヨーロッパ戦線のドキュメンタリーを数本放映し、実に悲惨な状況を鮮明に示してくれました。 そこで、思いつきました。ヒットラー、ムッソリーニ、スターリン、フセイン、カダフィーと続く独占者は、映像の上でも、直接に大声で号令をかけていました。しかし、日本の明治、大正、昭和の天皇は、権威はありましたが、強い直接的な権力を奮っている映像を見たことがありません。では、独裁者がいなくても、日本的な和の精神、組織を強大にする連帯感、情報に基づかず挑戦する全員の勇気などがあったから、戦争を始め、途中で止められなかったのでしょうか。これこそ日本にしか見られない実に不気味な現象といえます。たしかに軍隊や物作りには、チームワークは、絶対に必要です。しかし、戦争をすること、製品を作ることという目標については、目標が正しいのかどうか、絶えず進むか止まるかを多角的に見るべきでしょう。
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