社会への提言
2017年2月 トランプ大統領令に対する差し止め命令-そのオープンな手続に学べ-
私にとってはビックリ仰天の連続でした。アメリカの裁判手続が余りに早く、オープンであったことです。ご存じのように、トランプ大統領令は、7カ国の移民の制限をしました。これに対して直ちにワシントン州司法長官らが裁判所に差し止めを申請しました。そして、すぐに連邦地裁は差し止め命令を出しました。わずか4日です。日本では、まず3ヶ月か、いや1年はかかるでしょう。そして、トランプ大統領側が異議を申し立てたところ、連邦高裁は、また1週間でこれを却下しました。高裁は急ぐため、電話会議で各判事と審理し、同時に、双方弁護士を裁判所に呼ばずに電話で弁論をしました。米国でも異例とのことですが、必要に応じて実施しているのでしょう。すいぶん柔軟でうらやましい限りです。我々日本人にとって最もビックリなことは、全ての人々が弁論をユーチューブで聞けたことでした。米国では法廷の中に報道カメラが入り、テレビで映し出される状態があるので、当たり前のことかもしれません。 このようにオープンな手続をとれるのは、口頭で言い合う伝統がある上に、刑事と民事で、双方の当事者が証拠をすべて相手方に見せなければならないという証拠開示制度(ディスカバリー)があるからといえます。そのおかげで誰が見てもテレビドラマのように分かりやすい裁判となります。裁判官もオープンに手続を進めれば国民に納得いく形で結論を出せます。日本の裁判では証拠をなるべく出さないようにできるし、また書面の交換を主とするので、閉鎖的な手続となります。 奇しくも保守的なトランプは、米国の進歩的裁判を世界に喧伝することになりました。
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