社会への提言
2014年8月 豪雨による土砂崩れ-予防が重要
各地で、土砂崩れや土石流で悲惨な事故が続いています。誠に痛ましい限りです。今回に限らず、過去から何回も繰り返されております。行政も含め、関係者には是非過去の失敗から学んでほしいと切望します。私は最も重要な事例を思い出しました。昭和46年に川崎の生田で、崖の斜面に上から水を流す実験を行いました。マスコミが多数取材する中で、大きな土砂崩れが発生しました。下の方でカメラを構えていた15人も飲み込まれ死亡しました。新聞、テレビで大きく報道されました。43年も前のこの実験が活かされなければならないはずです。その30年後、私は建築会社の依頼で、同じ生田において、急斜面に宅地造成する工事に対して、近隣住民が危険だとピケをはる妨害をしたので、これを差し止める仮処分と本裁判を担当しました。住民側は上記実験のとおり、工事は危険だと強く主張しました。しかし、こちらは急斜面を固め安全にする技術によるのだと立証し、勝訴判決を得ました(判例時報1858号104頁)。その後、固い宅地が出来上がり、10年以上全く問題は発生していません。つまり、土砂崩れ防止の工事は、日本では可能です。但し、費用が相当にかかります。今回の事故は、かつての乱開発における安全審査を欠いた安価な住宅造成に原因があったと言えます。他方で、人口の過疎化により空き家が多く発生している状況では、安全なところへ移転する方が簡単と思われます。現在、行政やマスコミでは警報をいつ出すべきかなどの議論をしています。しかし、逃げたところで、帰ってみたら住めなくなっていたら、また建てるわけにはいきません。そこで、土砂災害防止法では土砂災害特別警戒区域に指定されると建築禁止と移転支援がされています。しかし、この法律が充分に活かされていなかったので、次々と事故が起こりました。尊い犠牲を無駄にしないために、国民全体の負担で移転して、事故から完全に逃げることに議論を広げていくことを切に望みます。
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