社会への提言
2016年2月 医療安全のために事故予防を充実させよう!
~医療従事者への刑事罰に反対する-ソフトローで院内安全管理~
千葉県がんセンターで、患者の乳房の検査の際、別の患者の検体と取り違えて、進行ガンと判定し、乳房を切除手術するという患者取違え事故が発生しました。約17年前に、横浜市立病院で、患者の取違えで、肺と心臓の手術がされ、医師4人、看護師2人が刑事罰を受けました。17年ぶりに発生した訳ではありません。同様の事件は減ってはいましたが、起こってきました。私が委員をしている医療機能評価機構の事故センターでは、全国の病院から、ヒヤリハットから死亡まで、幅広く情報が報告されています。患者取違えは減少していますが、左目と右目、左手と右手などの部位の間違いは、未だに目につきます。
そして、最も問題なのは、大手術に代わり、先進医療として患者に負担の少ない治療であるカテーテル、腹腔鏡、胸腔鏡などが登場したのに、これらで多くの事故が続いてきたことです。また女子医大事件では、プロポフォールという麻酔薬により小児が死亡したとされました。しかし、これは効きやすく醒めやすいという画期的な薬品で、多くの患者の利益になっていたもので、これを原因とする報道は正しくありません。実は、耳鼻科や小児科による不備が重なり、また多くの看護師や薬剤師のチェックをすり抜け、その挙げ句に発生したシステムエラーです。これらを刑事事件にせず、真実を明らかにしつつ、迅速な和解をし、予防策を作ることが重要です。
先日、2月21日の日米医学医療交流財団の医療安全セミナーでは、私の年来の意見を発表させて頂きました。私の弁護士法人フェアネス法律事務所には、ダブルライセンスの弁護士・医師、弁護士・薬学修士・薬剤師がいるので、今後は、「医療安全・先進医療研究会」を発足させ、多くの提言をしていく予定です。