
新しい福祉国家への道 - 「米国の財政政策」(片桐正俊著)
日本は、明治政府の国家主導の産業育成、軍需産業の拡大を承継して、戦後はさらに、道路や鉄道、多くの建造物などに莫大な国家予算をつぎ込みました。一貫して国家主導の産業育成の中で、同じような手法で、福祉政策を採用し、現在まで社会保障費を拡大させてきました。膨れ上がる国家財政を賄うため、増税に次ぐ増税が続いてきました。今回の選挙では、ようやく103万円の壁を壊すとの減税論になってきましたが、まず一歩に過ぎません。
他方で従前より、北欧にならって、支出を透明化すること、有益な支出に限定すること、無駄な支出を節減することなどが主張されてきました。今年も会計検査院が膨大な無駄を公表しました。立憲民主党が主導してきた課題であり、継続して、政局化すべきです。しかし、このような議論だけでは不十分であり、今まで正確には報道されてこなかった米国の政策に目を向けるべきです。米国の経済政策や福祉国家政策、二大政党の財政政策です。
私の親友の中央大学名誉教授片桐先生が、日本で初めての画期的で詳細な「米国租税政策・税制展開の財政学的考察:ブッシュ(子)、オバマ、トランプ、バイデン政権下の税財政分析」(日本評論社)を昨年末に出版しました。この本を読まれると、日本の財政政策も大きく転換すべきではないかと感じると思います。自民党や財務省も、硬直化した日本の財政を、柔軟にするために、大いに参考にすべきです。米国では、共和党は、法人税、所得税、相続税などの大規模な減税により、経済成長させ、その恩恵を社会の末端にまで及ぼすとのトリクルダウン政策をとってきました。日本が先進国となってからは、自民党は、この政策に転換すべきでした。
他方、米国の民主党は、労働者の賃金を上げ、一定の増税をし、社会保障を充実させ、それを通じて経済を活性化させるとのボトムアップ政策をとってきました。これにより、米国では、新しい福祉国家が形成されました。トランプの勝因も、レーガン、ブッシュ親子以来のトリクルダウン政策が、選択されたからに他なりません。つまり、共和党が減税、規制緩和により、経済を拡大させ、行き過ぎると民主党がこれをセーブし、修正してきたわけです。政権交代の起こる大きな理由です。日本では、減税や規制緩和のないまま、増税や無駄 な支出が続き、硬直化した財政自体が、経済や生活に悪影響を与えてきました。
新年に当り、自民党も野党も米国の政策をよく勉強し、財政の柔軟化、経済の活性化、新しい福祉国家の形成に向けて政策を展開してほしいものです。それにより、必ずや明るい未来が開かれるものと確信します。