
社会への提言
人質司法の改善を ―保釈制度の早期適用へ―
トランプ前大統領は、8月24日に逮捕されました。しかし、すぐに保釈金20万ドル(約2900万円)と引き換えに保釈されました。大統領経験者のように、偉い人だからすぐ保釈されたわけで はありません。米国では、凶悪犯を除いて、多くの犯罪で3日以内に保釈金(ポンド)を預けて、保釈を得られます。私も、裁判所を見学したとき、手錠をかけられている人たちが、法廷で次々と保釈決定されていく状況を見て、びっくりした経験があります。日本では、逮捕後、3日目に、検察官の拘留請求により拘留決定されます。この時点で、検察官が拘留請求をしない例、裁判官が拘留請求を却下する例が、ごく稀にあります。しかし、保釈金を積む保釈制度は、この3日目には、存在しません。拘留が20日続いて、起訴されたときに初めて保釈制度が適用されます。なぜ日本で戦後直後に米国の制度を導入したのに、大きく異なってしまったのでしょうか。GHQの法律家オプラ―博士は、刑事訴訟法の法案作りを指導していましたが、完成した法案を見て、「3日目に保釈制度を導入するはずだったが、指摘するのを忘れてしまった」と監督不行届だっ たことを認めています。カルロス・ゴーンは、日本の保釈制度を含む人質司法が欧米より大きく遅れており、逃げ出すことも正しいのだ、法の精神に合致すると考えたのでしょう。結局日本も先進国並みの文化国家となるには、人質司法を改善する必要があり、まずこの保釈制度を米国と同じようにしなければなりません。