行政部局の重要な役割 ―通達やガイドラインの法的効力―
私の「新団体法論」(信山社)は、会社や団体を扱っています。副題では、「国家・会社・社団・財団の法動態論」としています。これらの団体が、法律、定款、就業規則などを作成するのを重視しています。法的拘束力があるものとして重要なものばかりです。特に、皆様がいつも気をつけて守るようにしているものとしては、各省部局や都庁から出されている通達やガイドラインがあります。これについても詳細に解説をしています。公務員の方も含め、皆様に分かりやすく説明致しました。
通達やガイドラインは、いまではソフトローと呼ばれています。しかし、過去には、学者からは法的拘束力がないと言われてきました。公務員の間でしか効力がないとされてきました。つまり、公務員の多くの皆様は、法的な効力がないものを市民に押し付けていたのではないかと危惧してきました。そのようなことはあり得ません。そこで、本の中では、「行政部局」を1つの団体と定義しました。すなわち、行政部局でデータを集め、検討し、社会に役立つガイドラインなどを作成すれば、政府の政令、大臣の省令と同じように、法的効力があると結論付けました。
そのためには、ソフトローを広く国民に知らしめ、国民もその情報を知る必要があります。これを「周知性」といいます。20世紀後半FAXが普及し、21世紀にはインターネットが広がりました。これにより、行政部局から発信するソフトローが全国の公務員に伝わり、逆に全国の公務員からも、瞬時にアクセスすることができるようになりました。公務員は、これを全国の国民に適用し、他方で、国民は自分からアクセスし、自分にも適用させるように要求できる時代になりました。ある人が、適用を拒否されれば、裁判所がこれを適用するようになりました。すなわち、ソフトローは社会規範でもあり、法的規範でもあるようになったのです。
私は以前からこの説を唱えてきましたところ、教科書では初めて、東大前教授で現最高裁判事の宇賀克也先生が、「行政法概説」(有斐閣)で同じような説を解説されています。今回、更に詳しく自説を展開しましたので、とりわけ公務員の皆様にはお役に立てると存じます。