
文藝春秋編集長殿 ―国連改革の議論を―
文藝春秋5月特別号は、緊急特集「ウクライナ戦争と核」を掲載しました。表紙には、大きくフランスの有名な地政学者エマニュエル・トッドの「日本核武装のすすめ」が掲げられました。これは、「米国の核の傘は幻想だ」との副題をもつ論文です。トッドが世界で初めて公表する衝撃的な論文といえます。これに続いて、安倍晋三元首相が「核共有の議論から逃げるな(中国・ロシア・北朝鮮からこの国を守るため)」の意見を掲載しています。このような主張は、確かに短期的には日本の安全の確保のために極めて重要です。しかし、もはや多くの国々が核保有する中で、核武装をしても大きな変化はなく、また決して使用してはならない核をもつ意味も抑止力だけといえます。問題は、核兵器が偶然の失敗から使われたり、狂人の手により発射される危険をいかに避けるかです。また、限定的な使用や脅しとしての使用でも危険です。更に、現在の戦争では、ミサイルなどの大規模兵器により、多数の兵士や市民が同時に殺されています。それ故、言論界においては、至急現在の狂気の殺戮をやめさせる方法を議論すべきです。ロシアが平和を確保する目的をもつ国際連合の常任理事国であることに焦点を当てなければなりません。いままで、国連改革は議論はされ、様々な提案はされてきましたが、ロシアや中国の拒否権があるために、すべての構想が挫折してきました。しかし、侵略戦争を開始したロシアに対して、安全保障理事会の理事国の資格をはく奪する好機がきました。国連憲章の改正と共に、まさにロシアの拒否権を奪う最も良い機会となりました。文藝春秋の特集で是非「国際連合憲章の改正」の論議をされるよう要請します。これなしに、核武装のすすめだけをされるのは偏っているとの誹りを免れないのではないでしょうか。NHKの映像の世紀シリーズは、原爆の発明や開発をしたアインシュタイン、オッペンハイマー、湯川秀樹らの科学者が、死ぬまで迫害されながらも核廃絶を訴えていたことを感動をもって伝えてきました。私たちは、使えない核を多数保有し、危険を抱え続けるのではなく、国連改革により、核を減らすための新しい秩序を構築するべきでしょう。