持続可能な社会に向けて(5)―過半数決議の改善―
オリンピックの開催方法について、入江陵介選手は、「みんなの意見を聞いて、どうしたら納得した形で行えるのかしっかり議論してほしい」と述べ、テレビなどで大きく報道されました。オリンピック参加予定の選手であるからこそ、この発信は、社会に新鮮で素晴らしいものとして受け止められました。私も、これを民主主義社会における過半数決議の前提としての議論の重要性を訴えたものととらえました。過半数決議をするためには、データに基づく事実の情報開示、これを材料として議論をし、過半数決議をする必要があります。最近では、決議の後に、情報を追加した上で、議論をし、再度過半数決議をするやり方も勧められています。
既にオリンピックの開催に関して議論は進み、中止、無観客開催、3割観客開催などの意見が出ております。しかし、これらの意見の長所、短所は、必ずしも明らかではなく、どれにするか決めかねます。また、誰がどのように過半数決議をするのかもハッキリしていません。現状では、オリンピック組織員会、都議会、国会が過半数決議をしているのと同じ状況になっています。そこで、テレビや新聞では、世論調査を元に、中止が過半数を超えていること、また無観客でも開催するのは多くの事業者の事業停止に比べ不公平であること、感染の抑制に逆行することなどを訴えています。しかし、現状のやり方で対立を煽るのは、まさに入江選手の危惧するところであり、十分な議論を欠いたまま対立が進むのを座視できないという思いを抱くのは当然ではないでしょうか。
コロナ感染は戦争などと同じく、全国民に影響が広まるものです。全国民が議論に参加し、過半数決議をすれば、その結果について、いずれであっても、様々な長所と短所を理解し、国民の協力のもとに進められると思います。そのためには、町内会、自治会、労働組合、地方議会、医師会、弁護士会、スポーツ団体、政党などのあらゆる組織で過半数決議をすることが改善の道ではないでしょうか。その結果には法的拘束力があるとはいえませんが、国会や内閣で決定する重要な参考になることは間違いありません。つまり、国民にとって、その決議に至る議論の過程の中で出された多様な意見は、相互理解を深めることになり、対立から協調への道となるでしょう。さらに、コロナ感染は全国民の課題であることの意識が高まり、無観客や3割観客で実施したとしても、対立を抱えたまま突入するよりも、感染は確実に減少すると思います。