大坂なおみの快挙 ―7枚のマスクで優勝―
全米オープンテニス大会で、大坂なおみ選手が7枚のマスクに死亡した黒人被害者の名前を書き、優勝を遂げました。その直前に、8月のウエスタン&サザン・オープンで「BLACK LIVE MATTER(黒人の命も大切だ)」と書かれた黒のTシャツで入場しました。テニスの4大大会の規定では、社会的メッセージにつながるような物の着用は認められていません。違反すれば、出場停止など処分をうける制裁もあります。なぜ、抗議行動が許されたのでしょうか。テニス協会は、大坂選手の6月からの抗議のツイートやTシャツ着用から、全米オープンでの抗議を予想していたと思われます。大坂選手との協議を経たか否かは不明ですが、テニス協会は、例外的な臨時措置として、許しました。大坂選手の勇気ある行動が社会的に高く評価されている中で、テニス協会がこれを抑圧することは難しい面もありますが、他方で、テニス協会が、アスリートの社会参加を認めたことは、欧米の法の精神でもあり、徐々に進歩していく柔軟な考え方に基づくものといえます。また団体の役割が極めて重要なことを示しています。日本の様々な団体においてもこのような柔軟且つ大胆な判断をされることを望みます。さらに、重要なことは、大坂選手に続く選手の行動を許すかどうかでした。大坂選手は大会途中のインタビューの質問に答え、「誰か1人が語り出せば、ほかの全員に扉を開く」と極めて明解でした。大きな関心を持っていたところ、ベラルーシの21歳ベラ・ラプコ選手は、大坂選手に続いて、旧国旗の色でもある白と赤の服装で試合に臨み、ベラルーシでのデモへの共鳴を示しました。この可愛らしいシャツに反対できるわけもない状況の中で、さらに大坂選手の充実した心技体に基づく優勝は、健康で健全な社会を望む世界の人々に力強いメッセージとなったと思います。