■着床前診断をソフトローで運用しましょう。中絶目的の出生前診断、流産防止の着床前診断
最近新聞で大きく取り上げられている「出生前診断」とは、「着床後出生前診断」のことで「着床前診断」とは全く異なるものです。新聞は説明が下手で、内容について誤解をされている方も多いと思いますので、以下に分かりやすく説明します。
現在、大きな問題になっている血液検査による着床後出生前診断とは、人になっている「胎児」になってから血液を調べ、異常があれば中絶を選択することも可能というものです。これに対して着床前診断の対象は、妊娠前の早期の「前胚」です。まだ物の段階で人になっていません。試験管の中で前胚を診断して正常なものを選択します。これを母体に戻し着床させると「胚」になります。そして胚から胎児になっていきます。着床前診断はスタート時に検査しますが、着床後出生前診断は数ヶ月も経ってから検査します。
私の依頼者である神戸の大谷レディースクリニックの院長大谷徹郎先生は、不妊治療をされているご夫婦の為に画期的なアレーCGH法という新しい着床前診断の実施に成功し、先日公表いたしました。従来から行われていたFISH法では、一部の染色体しか検査ができませんでしたが、アレーCGF法では1~22番・X・Yの全ての染色体を検査できますので、流産の確率を著しく低下させることができます。
女性の場合には35才を過ぎると妊娠しづらくなったり、妊娠しても流産してしまう確率が高くなります。中には3回も4回も流産をされる方もいます。体に負担をかけずに、妊娠が可能となるこのように素晴らしい着床前診断は欧米に限らず世界中で実施されています。カトリックが多いドイツでは法律で着床前診断は禁止されていましたが、医師会は賛成をしていました。ある医師が患者のために着床前診断を実施し、検察庁と協議の上で、刑事裁判を受けましたが無罪となりました。この判決は、医師会、検察庁、裁判所があうんの呼吸で結論を出したものといえます。カトリックが強い国でも不妊患者の救済は少数者の権利として守られたわけです。